女子力高めなはずなのに
「井川さんは?兄弟、いるの?」

何の気なしに聞いた。

ちょっと知りたいのもあったけど。

でも井川さんの答えはちょっと意外だった。

「兄貴がね」

「エッ!?」

井川さん、名前は一樹じゃなかったっけ?

「名前に『一』がつくから長男なのかと思ってたよ」

「時々そう言われるけど、違うよ。俺は兄貴の補欠だから。繰り上げ当選して初めて意味がある名前なんだ」

「?」

言ってる意味がちょっとよくわからなくて首を傾げた。

「今は繰り上げ当選した状態だけどね」

「??」

もっとよくわからない。

「兄貴がいたんだ。もう死んだけど」

「え?」

……そうだったんだ。

それなのに、私、お兄ちゃんお兄ちゃんって連発して、良くなかったかな。

「なんか、ごめん」

「いいんだ、俺と兄貴は仲悪かったから。仲のいい兄貴の話なんて聞けて良かったよ」

「……そう?」

「うん」

井川さんはそう言ってうなずいたけれど、触れていた小指をスッと引いてしまった。

それはまるで、心の距離を置いたみたいで。

ほんの小さい面積なのに、急に冷たい空気を感じて、猛烈に寂しくなった。

私、聞いてはいけないことを聞いてしまった?
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