女子力高めなはずなのに
離れてしまった寂しさに耐えられなくて、すぐに追いかけてしまった。

またピタッと小指をくっつける。

指が触れた瞬間、井川さんはハッとしてしばらくじっと考え込んでいたけれど、急に小指で私の小指を絡め取った。

自分で追いかけておきながら、そんなことをされるとは思わなくてビクッとする。

驚いて見上げると目が合った。

眼鏡の奥の黒い瞳。

優しいような、悲しいような、光のない瞳。

その瞳はどういう感情を映しているの?

「今度は俺の話をしようか?」

井川さんがじっと目を合わせたままそう言ったから、私は黙ってうなずいた。

「俺が話をするなんて、特別だよ?」

「それは光栄デス」

こんな会話、さっきあったな。

井川さんの話って、私が話したような家族の話だろうか。

井川さんの子どもの頃の話?

どんな子どもだったの?

指を絡めたまま、井川さんは前をじっと見て話し始めた。

「俺んちはね、いつも兄貴だけが大切にされて期待されていたんだ。俺は兄貴の補欠として作られたんだよ」

「えっ?」

最初から予想外の内容で驚いた。

子どもに補欠なんて、そんなことってあるのかな。
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