女子力高めなはずなのに
槇村と営業の若手が賭けを始めたのは、槇村がうちを辞めると決まった頃だった。

営業と業務は同じフロアにあるが、連中は俺が奥にいるのに気がつかず、おかしなことを話し始めた。

槇村は女の子を落とす自信があると言い、それなら難しそうな子を落としてみせてくれ、という単純な賭け。ヤれたら3万円だなんて……。いい大人が、ばかばかしい。

まあ、槇村は相当なバカだ。ヤツが実家から厄介払いされていることは簡単に想像できた。

あの歳になって、他の会社で修業も何もないだろう。本来ならもう役員レベルを任されていてもいいはずだ。それなのに、他社で武者修行なんてありえない。

女か金銭か、なんらか問題を起こして追い出されたんだろう、というのが俺の予測だった。

たぶんどっちもだろうな。

賭けで女を抱こうだなんて、俺には考えられない。それも、たかだか3万円のために。

低次元だ……。

でも聞いてしまった以上は注意するか。管理職としても放置はできない。
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