女子力高めなはずなのに
たくさんいる部下の子たちを守るためにも、そろそろ身なりも態度もきちんとして、正面から営業と渡り合うべきかもしれない。

これじゃあ俺は、いつまでたってもふて腐れた次男のままだ。

そろそろ本気出そう。

そんなことを考えていた矢先だったから、中野さくらに「仕事は一人でやってるわけじゃない」なんて説教した言葉は、全部自分に向かって言っているような気がした。

自分の言葉なのに自分の身に沁みて、つい強く言い過ぎたのかもしれない。思いのほか中野さくらは落ち込んでしまった。

話してみてわかったが、中野さくらは幼いところがある。すぐ泣くし、落ち込みやすいし。それだけ感受性が豊かってことかもしれないが。

だから授業のフリをして遊んでやったら、楽しそうに俺をオッサン呼ばわりしてきた。ムカつくな。

でも、オッサンと言われたことより何より「好きな人がいる」と言われて強い衝撃を受けた。

中野さくらの気持ちは俺に向いてると思っていたのに。だから、抱き締めたりしたのに。抱き締められている彼女だって、そんな感じだったのに。

食事に行く約束をしていたなんて、その好きな男は槇村ってことかよ!

君はバカだ!

あんな男が好きなのか?

あの男が好きなら抱かれてしまえばいい。好きな男に抱かれるなら、本望だろう?
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