女子力高めなはずなのに
そうしてしばらく黙って抱き締めていたけれど、井川さんは小さな声で囁いた。

「……好きだ」

少し擦れたその声にゾクッとした。

「好きだよ。中野さくらが大好きだ」

そんな台詞……!

キュンとしすぎて胸の奥まで痛すぎて、痺れて死にそう。

井川さんの口からそんな台詞が出てくるなんて、これは現実?

寒い冬の外なのに暖かいし、夢なんじゃない?

でも、抱き締めていた腕をゆるめて肩を掴まれたら冷たい空気が入って来た。

……やっぱり現実!

井川さんは私を正面からじっと見つめてきた。

「本当はあの時言おうと思ってたのに」

「……あの時?」

「一緒に残業した時」

あの時……、抱き締められた時?

「好きでもない女に、お前はそのままそこにいるだけで価値があるよ、なんて言って抱き締めたりしないだろ?普通」

「……」

「それなのに、お前が好きな人がいるとか言うから……」

「ごめん……」

私、本当にバカ!

あの時も誰かの代わりにされてるって思ってあんなこと……。

「俺は一度フラれたんだよ。あーあ、可哀想な俺」

「……だから、ごめん」

私が困った顔で言うと、井川さんはニヤッと悪い顔をした。
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