女子力高めなはずなのに
また私のこと、バカな子って言った!

それに……、心に決めた人って、言った?

「!」

え……?

心に決めた人?

見上げてじっと見つめる。

でも、私たち、知り合ったのつい最近だよね?

心に決めた人がいるってノムさんに言ったの、私と知り合う前の話でしょ?

「……そんな、おかしいよ。知り合ったのほんの最近なのに」

「俺は入社した時から知ってるよ、中野さくらさん」

「え……?」

どういうこと……?
私は井川さんのこと、全然知らなかったけど。

「俺のことなんか、全然知らなかったって顔だな?」

「そ、それは……だって」

「9年前この会社に入った時、あの営業所に1年いたんだけどね、俺」

そうなの?

失礼だけど、本当に覚えていない。

「……ごめん」

「そんな眼中にもなかった色白やせ眼鏡をお前は好きになったんだろ?」

「なっ!」

なにその余裕な表情!

自分で言う?

っていうか私の気持ち、分かっちゃってる?

おろおろしていたら掴んでいた手首を離されて勢いよく抱き締められた。

「わっ!」

ぎゅうっと胸の中に閉じ込められる。

全然身動きができない。

でも、その包まれた感じがすごく心地良くて、大人しく身をまかせた。
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