女子力高めなはずなのに
ため息をつきながら1階の倉庫から資料をゴソゴソ取り出していたら、ばったり槇村さんに会った。

やだっ、嘘みたい!

驚きと緊張で一気にピリッと姿勢が良くなる。

「おっ、中野さん!」

「こんにちは」

ぺこりと頭を下げる私。

なんだろ、この純情な中学生みたいな感じ。

「中野さんは坂田さんの送別会、行く?」

「はい、行きます」

「良かった、俺も行くんだ。いろいろ話ができるといいね」

「そうですね」

にっこり笑顔を作ったものの、私ったら資料を胸に抱きしめたままガチガチになっている。

そんな緊張状態の私に、槇村さんはグッと一歩近づいて、手を伸ばしてきた。

……え?

なに?

「中野さんは本当に綺麗だね」

槇村さんは囁くように言いながら、そっと私の髪の毛先の束に触れた。

やだっ、そんなセリフ……。

そんな仕草……。

もう、ドキドキしちゃって目が泳いじゃって。

三十路前のいい大人なのに、固まってじっとしていることしかできない。
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