女子力高めなはずなのに
坂田さんの笑顔を見たら、いなくなってしまうのが急に寂しくなった。

坂田さんはちょっと面倒な仕事でも「りょうかーい!」と言って、いつも快く引き受けてくれる働き者。

こういう根が親切で真面目な人がいなくなっちゃうのはすごく残念だな。

「坂田さん、ご実家って農業なんですよね?こんなこと聞いていいのかわからないんですけど、奥さんよく賛成してくれましたね?」

私はどうしてもそこが気になっていて、聞いてみたかった。

「あははっ、そうか。ずっと都会暮らしだと反対するかもね。うちは奥さんと同郷なんだよ。前から二人でいつか帰りたいねって言ってたんだ」

おー、そういうことか!

「じゃあ、奥さんはもともと賛成だったんですね」

「うん。子どもも今年専門学校卒業して就職するから、ここで一区切りっていうのもあって。うちの親ももう年だし、いいタイミングかなと思ってさ」

「そうでしたか」

「なんと!うちの奥さんと俺、高校の同級生なんだよ」

「えー?もしかして、坂田さんって奥さん一筋ですか?奥さんも坂田さん一筋?」

「そう!」

「すごい!いいなー!素敵ですねー」

それは本当にすごいな……。

お互いにお互い以外の人を知らないなんて。

なんか、もう、私、そんなピュアな恋愛とは縁遠くって……、後ろめたくなる。
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