キャッチ・ミー ~私のハートをつかまえて~
過呼吸起こすほど怯えてるあいつが、事件の犯人のわけねえだろ!
あのバカ野郎はそれも分かんねえのか?
ホントに「任意」で「同行」してもらったのかすら疑問だ。

聖に手荒な真似をしたら、今後絶対キャリアアップできねえようにしてやると言ってやろうと思ったが、今は敷島を脅してる場合じゃねえ。
今の俺にできることは、自販機に八つ当たりしてぶっ壊すことでもねえ。
この事件の犯人を捕まえることが、今の俺にできる最善のことだ。

聖はシロだという俺の主張を、上司のれんじさんとなつのさんだけじゃなく、特課のメンバー全員が信じてくれた。
結果、真犯人を捕まえることができた。


犯人は、東京都に住む35歳の女と、38歳の男。
二人は結婚10年目の夫婦で、約6年前、車が転落する事故に遭い、女のおなかにいた赤ん坊を亡くした経験があることが、今回の事件の元凶だった。

「うちの子は死んでしまったんだから、あそこの家に二人も子どもはいらない」と思った女は、衝動的に子どもを連れ去っては、抵抗する子どもを「黙らせる」ために、口と鼻を塞いでいた。

34週で死んでしまった胎児は男の子だったことから、最初は「生きていれば」と自分の子と重ね合わせていたようだ。
そのうち、「あの子には弟が必要」と思い、最後は「妹をつくってあげたかった」から、女の子を殺した。

そうやって衝動的に殺しをしていた女だが、妊娠後期の母親がいる、3歳から5歳の男の子を狙っていたという点、そして子どもを殺したことを罪だと思っていない女は、精神鑑定をする必要がある。
メモを残したのは、「妻の“衝動”を警察に見つけてほしいという気持ちがあった」と男は言っていたが、警察へ自首する勇気までは持ち合わせていなかったようだ。

俺の同僚で、育児休暇中の神谷頼雅(らいが)が言ったとおり、ペンダントは聖のじゃなく、結局犯人のものでもなかった。
単にデパートに落ちてた落し物だ。
それを敷島のバカは、とんでもない早とちりをしやがって!・・・ったく。

この連続幼児誘拐殺人は、子どもにまつわる夫婦による犯行ということで幕を閉じた。


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