むせかえるよな倉庫の片隅で
「……怪我は?」
いつものハスキーな声で、そう聞かれる。
「いいえ……っていうかセンター長、背中……」
「ああ……痛いな。
でも、あんたに怪我がなくて良かった」
怪我がなくて良かった?
てっきり怒られると思っていたのに、意外な言葉を聞き、胸のどこかをつかまれたような気がした。
「無理しなくていい。
何かあったら、呼べと言っただろ?」
「ご、ごめんなさい、商品……」
「ここには割れるようなものはないから、大丈夫」
センター長は冷静な顔で、雪崩れた段ボールを指さす。
その中には彼の背中を打ちつけた芳香剤もあったけど、ほとんどがタオルとかぬいぐるみの類だった。
それと、最初に探していたライターのオイル。
何個かはへこんじゃったかもしれないけど、オイルは流れ出てないみたい。
「良かった……」
ホッと胸をなでおろすと、センター長も小さく息をつく。
「そういう、なんだかんだ真面目に仕事のことを考えているところをいつも見ているから、何でも荒川さんに頼んでしまうんだ」
「え?」
「ごめんな。ここにあるってついさっき思い出して、急いで来て良かった。
……本当に、あんたに怪我がなくて、良かった」
遥か高みから私を見下ろすセンター長は……ちょっとだけ照れくさそうに、笑っていた。
そこにはいつもの威圧感はどこにもなくて……。
強くて甘い香りのような、胸がいっぱいになる感覚を、私にもたらした。