濡れてもいいから
荒々しいキスに紀美香は我を忘れ、唇を割って入ってくる舌に、息をするのも忘れるくらい翻弄された。
泰成の唇が口から離れ、鼻先で頬を擦り、柔らかい耳へたどり着くと耳たぶを甘がみされる。体に甘い電気が走り、自然と背中がのけ反った。

「泰成、風邪、引いちゃう……」

甘い疼きに意識が朦朧とするなかで、なんとか口にする。

「話しする余裕、あるんだ?」

耳たぶから口を離した泰成は掠れた声で囁き、紀美香の首筋に舌を滑らせた。

「それなりの覚悟は出来てるんだよね?」

「……え?」

泰成の声が遠くから聞こえた。ぼんやりと頭の中が霞かがって考えられなくなっている紀美香は、なんとか反応する。

「濡れた服が体にピッタリくっついて、紀美香の体のラインがはっきり見えてた」

泰成の手が肩から胸、胸の下、腰のくびれにゆっくり下りていく。

「潤んだ瞳にそんな姿でいられたら、誘ってるとしか思えない」

シャツの中に滑り込んできた大きな手が胸のふくらみを覆う。優しく揉みしだくように動きだした。

「ちがっ……!」

そういうつもりなんかなかったというつもりが、キスで封じられた。

「このまま抱くから」

キスの合間に、泰成が体を押し付けてきた。ふたりの濡れた服を通しても、泰成の体が準備できていると分かるくらい硬くなっていた。紀美香は自分と同じように服を着たままびしょ濡れになった泰成の体に手を滑らすが、濡れた服が邪魔で思うように動かせない。
もどかしい。

「泰成、脱いで」

紀美香の願いに応え、1歩後ろに下がった泰成は、両手でシャツの裾を持ち上げ一気に頭から脱いだ。引き締まった体が露になり、紀美香はその胸に飛び込み、堅い胸に頬を押しあてる。
シャワーが紀美香に直接当たらないように泰成は体をずらして背中で受けた。

蒸気で曇る浴室内で絡み合うふたり。
時間も場所も忘れて、愛の行為に没頭した。
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