裏腹王子は目覚めのキスを
土日、普通に休みが取れても、食料品の買い出しに付き合ってくれたり、わたしと一緒に映画を観に行ったり、たまに男友達から連絡を受けて飲みにでかけるくらいで、女物の香水の匂いをまとって帰ってくることも、帰宅が遅くなって泊まってくるということもなかった。
今までは忙しいから女の人と遊ばないのだと思っていたけど……。
前よりも自由な時間があるはずなのに、どうしたんだろう。
わたしの目を気にして……とか?
まさかね、と思いながら、わたしは出先のスーパーでクリームチーズを物色した。
実家に戻ろうとしたわたしを引き止めて、自宅を使わせてくれると言ったのはトーゴくんだ。
女の人を連れ込むのに、わたしが邪魔になるのは最初から分かっていたはず。
それとも、外でわたしの知らないあいだに女遊びをしているのかな。
手にとったイチジクを見つめながら、考え込んでしまう。
そうなのかな。トーゴくんは器用だから、わたしに気づかれずにそういうこともできるかもしれない。
イチジクを持つ手に、力が入った。
でも、だからって、わたしには何も言う権利はないし、そもそもこうやって考える意味すらない。
わたしはただの幼なじみで、居候で、家主であるトーゴくんがたとえ節操のない行いをしていても、それをとやかく言うことはできないのだ。