裏腹王子は目覚めのキスを
イチジクを潰してしまいそうになって、わたしはあわてて手を開いた。
買い物かごに入れて、気持ちを切り替えようと目をつぶる。
トーゴくんは最近、顔色がよくなってきたと思う。
きっと、きちんとご飯を食べて、通常の生活スタイルを取り戻しつつあるからだ。
仕事も落ち着いてきたようだし、わたしの役目もほとんど終わったようなもの。
早く仕事を見つけて、あのマンションを出たほうがいい。
王子様のご厚意に、甘えすぎてはいけない。
わたしはトーゴくんの役に立ちたいけれど、負担には決してなりたくないから。
マンションに戻り、いつもよりも手の込んだ料理をつくるために、下ごしらえをはじめた。
トーゴくんは今日、出先から直帰するからいつもよりも早く帰ってくる。
特別な今日のためのスペシャルメニューは、特製スペアリブにビジソワーズ、それからミモザ風サラダ。それと忘れちゃいけないイチジクのチーズケーキ。
ロウソクも抜かりなく用意してある。
腕によりをかけて、お祝いするのだ。