裏腹王子は目覚めのキスを
「なんで今日、こんな気合入ってんの」
テーブルに並ぶ料理を眺めながらあきれたように言うから、わたしはむっとした。
「なんでって」
焼き上げてカウンターに置いておいたホールのケーキを、トーゴくんに突き出す。カットしたイチジクを花びらのように円形に飾り付けたチーズケーキだ。
「ほら、これ」
ケーキの真ん中には二本のロウソクが立っていた。
数字の3と0を象った、青いロウソクに、王子様が「げ」と顔を歪める。
「トーゴくん、三十路おめでとうー!」
満面の笑みで言ったのに、王子様は苦い顔をした。
ふたりがけの狭いダイニングテーブルに置ききれないくらいのお皿を辟易したように見つめ、ため息をつく。
「はりきりすぎだろこれ。食いきれねーよ」
唇を曲げた嫌そうな表情とぶっきらぼうなセリフ。でも、それが照れ隠しだということくらい、わたしはお見通しだ。
「ね、座って」
「いや……先に着替えて」
シャツのボタンを外そうとする手をあわてて押しとどめた。
「いいからいいから、せっかくだからレストランみたいにしようよ」
「はあ?」
テーブルの支度をすべて済ませ、あとはスペアリブが焼きあがるのを待つばかりになると、わたしは部屋でお気に入りのワンピースに着がえた。
パーティーみたいなゴージャスな格好はできないけれど、せめて気分だけでもと、普段下ろしてばかりの髪をサイドで編み込み、ひとつにまとめる。
リビングに戻って訝るトーゴくんを強引にテーブルに座らせ、ダイニングの電気を消した。