裏腹王子は目覚めのキスを
窓ガラスの外で、星の代わりに遠くのビル群がきらめいている。
キッチンと廊下の光を頼りに、部屋のあちこちに設置しておいたキャンドルに火を灯していくと、大小さまざまな形の炎が部屋の中をオレンジ色の優しい色で満たした。
「クリスマスかっつーの」
トーゴくんのため息をわたしはやり過ごす。
揺らめくオレンジの明かりは、確かに真冬のぬくもりを思い出させるけれど。
「いいでしょ、別に。キャンドルの炎にはリラックス効果だってあるんだから」
キッチンに戻って、用意しておいた食前酒のシャンパンボトルを掲げて見せる。
「食事用にワインもあるけど、トーゴくんはビールのほうがいいよね?」
「……ああ」
テーブルキャンドルに照らされて、トーゴくんの影が大きく揺れてる。
わたしは席に着くなり、正面で大人しく座っていた王子様が奇妙な顔をしていることに気がついた。
わざと唇を噛んで、表情を出さないようにしているみたいな……。
「どうしたの?」
「……べつに」
唇を尖らせて、子どもみたいな拗ねた顔をする。
不思議に思いながらも、わたしはグラスにシャンパンを注いだ。
「トーゴくん、さんじゅっさい、おめでとう~!」
「三十をやたら強調してんじゃねーよ」
眉間に皺を刻んで、彼はシャンパンを一気に飲み干した。
「言っとくけど、男は三十からだからな」
「え、どういうこと?」
「三十歳から男っぷりが上がってくって言うだろ」
唇の端を歪めて、いたずらっぽく笑う。