裏腹王子は目覚めのキスを
女の人が感じるような三十代に突入する焦りが、男性にはそんなにないのかもしれない。
歳の取り方が、男性と女性とでは違うのかな。
サラダやスペアリブを取り分けていると、王子様はスープを口に運んでいた手を止めた。
「お前はいつだっけ、誕生日。つか、よく俺の誕生日なんて覚えてたな。自分でも忘れてたのに」
「小学生の頃にインプットした事柄って結構忘れないんだよね」
わたしの誕生日は十月だけど、その頃にはもうこのマンションにはいないんだろうな、と思うと、なんとなく寂しい。
「あ、そうだごめん。食材にお金かけちゃったからプレゼントまでは用意できなかったの。期待しても、もう何も出ないからね」
「別に期待なんてしてねーよ」
そう言ってから、トーゴくんは思い直したようにわたしを見た。
「けど、そういうときは奥の手があるじゃん」
「え、奥の手?」
きょとんと瞬きをした瞬間、テーブルの向こうから骨ばった指が伸びて、編みこんだわたしの髪に触れた。
さわりと耳の上をくすぐられ、硬直する。
トーゴくんの瞳が、まっすぐにわたしを捉えて――。
「こうやって自分にリボンかけて、”わたしがプレゼント”――って」