裏腹王子は目覚めのキスを
確かに、トーゴくんと一緒のベッドで寝たこともあるけれど、それは幼い頃の話だし、何年も会ってなかったうえにもうすぐ二十七歳になる女を同じベッドに寝かそうとするなんて……。
それって普通の男性の感覚なのだろうか。
「と、トーゴくん」
わたしが意識しすぎなのかな、と思いながらも頬が引きつる。と、彼は不意に壁の時計を見て青ざめた。
「やべ、もうこんな時間じゃねーか」
慌てた様子でクローゼットの扉を開くと口早に言う。
「このへんに替えのシーツとかあるから、適当にやって」
「え、あの」
寝室をあとにして玄関に向かっていく彼を追いかけると、トーゴくんはいきなり部屋の鍵を渡してきた。
「一応スペアキー渡しとく。スーパーもコンビニも通り沿いにあるから」
立ち尽くすわたしの頭をぽんと叩いて、彼は棚からライトブラウンのローブーツを取り出した。
天井まである靴専用のクローゼットには革靴やらスニーカーやらがずらりと並んでいて圧倒される。わたしと弟の靴を合わせたって、こんな数にはならない。
部屋が雑然としているのは、片付けていない以上にとにかく物が多いせいかもしれない、と考えているうちに王子様は玄関の扉を開けた。