裏腹王子は目覚めのキスを


 
土曜日の夜の予定といえば友達と集まるとか仲間と飲み会とかいろいろあるだろうけれど、一番可能性が高いのはやっぱり、彼女と過ごす甘い夜、といったところだろうか。
 

使い慣れないバスルームでシャワーを浴び、持参したパジャマに着替えて、わたしには大きすぎるベッドに寝そべってみた。

ふわりと漂う香りには微かに香水の硬質な匂いが混じっていて、昔のトーゴくんにはなかった大人の男性の気配がする。
 

ほんのり温かみのあるオフホワイトの床と、無垢な白さがまぶしい部屋の壁。色相がわずかに異なるだけの白に囲まれた寝室は、備え付けの收納棚やサイドボードがほとんど黒で統一されている。
 
外向けのさわやかな白に、内に隠した本音の黒。

トーゴくんの性格みたいだな、と思いながら痕跡を探すけれど、女の人が好みそうな家具や小物はひとつも見当たらない。
 

彼女……いないのかな。
 

ごろりと身体を返して天井を見つめた。何の変哲もないダウンライトの明かりが、リビングよりは物の少ない寝室を優しく照らしている。
 
もし彼女がいるなら、彼氏がこんな部屋で暮らしているのを見過ごすはずはないか……。
 
いくら忙しいからってこんなに散らかった部屋で生活していたら、過労で倒れる前に病気になってしまう。
 
布団にもぐりこんで、わたしは膝を抱えた。トーゴくんの匂いに包まれて、なんだか気持ちが落ち着かない。

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