裏腹王子は目覚めのキスを
彼には今現在、彼女がいない。
自分のベッドにためらいなくわたしを寝かそうとすることを考えても、それは間違いないはず。
つまり、トーゴくんは相変わらずなのだ。
はあ、と吐息が漏れて、肌触りのいいシーツを湿らせた。
わたしは、一般的に整った容姿を持つ男の人が苦手だ。
すれ違う女性が振り返るような美形の男性は、ほぼ例外なく学生の頃からモテている。
女の子が放っておくはずがないから、ちやほやされるのを当たり前だと思っていたり、付き合う彼女が途切れなかったり。
そして「かっこいい」と言われ続けたことにより、自分の容姿がどれだけ周囲に対して威力を発揮するかを十分すぎるほど理解している。それ故に、特定の女の子と付き合わずに軽薄な態度を取っている人も多い。
……トーゴくんがそうだった。
わたしが物心ついた頃からトーゴくんはきれいな顔をしていて、近所でも評判の美男子だった。
中学生の時は会員数が百人を超えるファンクラブがあったし、高校生の頃はトーゴくんもすっかり自分の美しさを自覚して、毎日のように違う女の子を連れて歩いていた。
彼女がいたこともあったはずだけど、だいたい同時進行で複数の女の子と付き合っていて、面倒くさくなると容赦なく切り捨てる、ということを繰り返していた。
一度だけ、修羅場を見たことがある。