裏腹王子は目覚めのキスを
* * *
物事は思うようには進まない、と改めて感じる。
勉強をしなきゃいけないときに限って部屋の掃除がしたくなるとか、仕事が忙しいときに限って面倒事が舞い込んでくるとか。
人の気持ちは、大事な場面に限って空回りをするものだ。
健太郎くんとの通話を終えて、わたしはリビングの床にへたりこんだ。
平日の午後二時。ありとあらゆる窓を全開にしていても、部屋の中は蒸し暑い。
「また……ダメだった」
力なく漏れた声は、湿気にまとわりつかれて落下する。
派遣の登録をし、最初の企業で面接を受けてから一ヶ月が経っていた。
その間、訪れた会社は四社。受けた面接も四回。わたしはそのすべてに落ちた。
「ことごとく断られるって……」
フローリングに座り込んだまま動けなかった。白くて硬いはずの床面に、そのままずぶずぶと沈んでしまいそうだ。
「派遣って、こんなに決まらないものなの……?」
自分の考えの甘さを突き付けられたようで、うなだれた。
となりの公園で鳴いているのだろうか、じりじりと羽を震わせるセミの合唱は、失意のわたしの胸に重く響く。
季節はすっかり夏だ。
地元と違って湿度が高いからか、家の中でじっとしているだけで身体はべたついてくる。
「やっぱりわたし、ダメなのかな……」
せっかく足を踏み出したのに、社会に出ることすらできないなんて。
自分の不甲斐なさにほとほと呆れる。