裏腹王子は目覚めのキスを
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お父さんの言ったとおり、降り注ぐ太陽は確かに強いけれど、からりとした暑さでやっぱり都内に比べればここは天国だ。
門扉を抜けて家の前の通りに出ると、桜太が「あ」と声を上げた。
「トーゴ兄ちゃん!」
見れば、隣の家の塀にもたれかかって紫煙をくゆらす人影がある。
白いポロシャツにチェックのクロップドパンツ姿でサンダルをつっかけている彼は、走り寄っていく弟を見て不思議そうに目をまたたいた。
「あん?」
「俺だよ、トーゴ兄ちゃん。桜太!」
「桜太? うわ、まじか! なんだこの頭」
トーゴくんの左手が、桜太の頭をわしゃわしゃとなでる。その顔が子供みたいに無邪気に崩れて、思いがけず胸が締まった。
「つか、お前、俺より背でかくなってね?」
「そう? 俺いま176センチだよ」
「……一センチよこせ」
同じくらいの背丈の彼らを数メートル先に眺めながら、わたしはぽかんとしているみのりちゃんに彼らを指差してみせる。
「あれ、隣の家の幼なじみでトーゴくん。桜太は昔っからトーゴくんのことが大好きだったんだよ」
「ああ、羽華子さんと同居中の……。なんか、すごくかっこいい人ですね」
さらりと感想を述べるみのりちゃんの表情は、うっとり見とれているというよりも、男ふたりのじゃれあいを見て楽しんでいるという様子だった。
トーゴくんが弟に請われてポケットから携帯を取り出している。嬉しそうに番号を読み上げる桜太の仕草から察するに、どうやら番号交換をしているらしい。
それが終わると弟がふいにこちらを振り返った。