裏腹王子は目覚めのキスを
「みのり、ちょっと」
弟の手招きで、みのりちゃんが彼らのほうに向かっていく。なんとなく、わたしもあとに続いた。
「トーゴ兄ちゃん、紹介する。俺の彼女、みのり」
「はじめまして、篠田みのりです」
『桐谷』と表札のかかった家の前で、にわかに自己紹介が始まる。
みのりちゃんがぺこりと会釈をすると、トーゴくんは「どうも」と静かに答えた。
他の女の子に見せる王子様の微笑はなく、あるのは身内に見せるそっけない表情だけだ。弟の彼女だから、愛想をふりまくつもりはないらしい。
「すげーアジアンテイストだな……」
彼女を見てぽつりとこぼした声に、嬉々として答えるのは桜太だ。
「みのりは東南アジアフリークなんだよ。タイ料理とかも作れるし」
「へー」
「そんで俺たち、来年結婚すんの」
「結婚!?」
さすがに驚いたらしく、トーゴくんは煙草の煙にむせて咳き込んだ。
「お前、年いくつだっけ?」
彼を驚かせたことに満足したように、桜太は満面の笑みで答える。
「来年二十三歳」
「若っ」
「あ、トーゴ兄ちゃんも結婚式来てよ! まだ具体的な日取りは決まってないけど」
「結婚式……ねぇ」
腕組みをして塀によりかかる王子様の目が、ちらとわたしを見る。