裏腹王子は目覚めのキスを
 
その指先から不定形な煙草の煙が空へ消えていき、わたしの胸は何故だかざわめいた。

心の動揺を悟られないように、無理に笑顔をつくる。

「と、トーゴくんは、こんなところで何してたの?」
 
わたしたち三人の視線を受け止めて、王子様は「ああ」と思い出したように眉を歪める。

「もう、ガキどもがうっさいわ、しつこいわで」
 
彼が肩をすくめながら玄関のほうを振り返った瞬間、家の中から子どもの甲高い声が響いてくる。

「統吾お兄ちゃんーどこー!? 続きやろ続きー!」

「騒ぐんじゃねーよ! 一服してんだから、大人しく待ってろ!」
 
開け放った庭の窓のほうに叫ぶと、トーゴくんは「はあ」と疲れたように背を丸める。
 
その様子につい笑ってしまった。
 
どうやら甥っ子たちとゲームをして遊んであげていたらしい。

「まったくうるせーガキどもめ」
 
口では突き放すようなことを言っても、トーゴくんはきちんと子どもたちを可愛がっている。

「じゃあ、トーゴ兄ちゃん、俺ら行くね」
 
トーゴくんが携帯灰皿で煙草の火を消すのを見て、桜太は切り出した。
わたしたちを連れ立つように自宅へ向かいながら、振り返って携帯をかざす。

「あとでメッセージ送るから、返事ちゃんとちょうだいね!」
 
弟の声にさりげなく振り返ってみると、トーゴくんは返事の代わりに軽く右手を上げて、自宅へと入っていった。

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