裏腹王子は目覚めのキスを
カチッカチッとウィンカーの音だけが鳴り響く。
ひと呼吸置いて、
「ええ!?」
「え、みのりマジ?」
わたしの悲鳴じみた驚きと、桜太の確認するような声とが重なった。
みのりちゃんは桜太の視線を受け止めて、静かにうなずく。
「うん、そんな感じ、した」
脳内の回路が断たれてしまったみたいに頭の中が弾けて、大小様々な星がきらきらとまたたく。
驚愕のあまり放心状態に陥ったわたしは、かろうじて唇を震わせた。
「な……何を言って」
「みのりの直感て、結構当たるんだよな~」
何か心当たりでもあるのか、桜太がしみじみとうなずき、ミラー越しにわたしを覗き見る。その視線に、ぼっと頬が燃えた。
「そ、そんなわけないでしょ! あのトーゴくんが、わたしをなんて」
「羽華子さんとトーゴさん、すごくお似合いに見えましたけど」
助手席から振り返って言うみのりちゃんの目は、真剣そのものだ。わたしは頬を引きつらせた。
「学生はすぐそうやって、好きとか嫌いとかで盛り上がるんだからー」
誤魔化すように笑って、自分の心臓の音を隠す。
予期せぬ発言に顔の火照りはおさまらない。
ふたりの会話から逃れるように窓の外に目を向けた。日差しに焼かれて濃い影を落とす街路樹が、暑さを我慢するように立ち並んでいる。
ふいに塀に寄りかかる王子様の姿がよみがえった。