裏腹王子は目覚めのキスを
「お、桜太っ、あぶな」
赤信号待ちとはいえ、いきなりブレーキを踏み込み過ぎだ。
運転席のシートに手をかけながら注意をすると、弟は振り返った。
「なにそれ!? 彼氏いんのにトーゴ兄ちゃんの家に居候してんの?」
車内いっぱいに響き渡る声に、わたしは前に乗り出していた身体を縮めた。
眉間に皺を刻んだ桜太の目が、鋭く突き刺さる。
「う、うん……。やっぱりトーゴくんに悪いよね。だからわたしも早く仕事を決めたいんだけど、なかなか」
「いや、ていうか普通に考えたら、彼氏の家にいるべきでしょ」
「うん……でもお母さんに話したら反対されそうだし、まだ一人暮らしはできないし、それに彼自身がトーゴくんの家に世話になってなよって」
「はあ? なんだそれ」
いつかのトーゴくんと同じ反応をされて、わたしはすごすごと後部座席に沈んだ。
車内の空気が重い。
みのりちゃんは前を向いたまま黙って話を聞いているけれど、やっぱりおかしいと思っているかもしれない。
妙な罪悪感が湧いて、わたしは肩をすぼめた。
「健太郎くん……その彼氏ね、少し変わってて。自分の領域を冒されることをひどく嫌うから……」
「冒すって……彼女じゃん」
「うん、まあ、そうなんだけど……」