裏腹王子は目覚めのキスを
 
今こう思ってるんだろうなと、わたしのほうで彼の心の内を勝手に解釈するばかりで、本当の気持ちを読み取れてないんじゃないかと心配になることもある。
 
それでも健太郎くんはわたしが嫌だと思うことは決してしないし、わたしのことをいつも考えていてくれる。
 
彼は、わたしの大切な人だ。
 
それなのに、自分の未来を想像したときに、イメージが浮かばない。
 
いつか観たドラマの女優みたいに、純白のドレスをまとった自分の姿は想像できるのに、となりに立つ男性の姿が見当たらない。
 
わたしと一緒に幸福への道を歩いてくれる男の人は……。

「なんかあったら連絡してよ」
 
右折する車の動きに合わせて、桜太の声が揺れる。

「姉ちゃん、変に意地っ張りっつーか、人に甘えんの下手だから」

「桜太……」 

「困ったこととかあれば、いや、困ってなくても、なんでもいいからちょくちょく連絡して、絶対」
 
ミラー越しの視線は、思いがけず優しかった。

「あ、わたしも、お役に立てることがあればなんでもしますから」
 
振り返ったみのりちゃんの柔らかな表情に、じわりと胸が熱くなる。

「うん……ありがとう、ふたりとも」
 
自己嫌悪に陥りそうだった。
 
5つも下の弟やその彼女にまで心配されているとは。
 
なんて不甲斐ない姉なんだろう。
 
車に揺られながら、いたたまれない気持ちになったわたしは、また性懲りもなく王子様のうつくしい顔を思い出して、今度はなぜだか心が慰められた。


< 159 / 286 >

この作品をシェア

pagetop