裏腹王子は目覚めのキスを
 
 * * *


地元に戻ってからの三日間は近所の祖父母の家に顔を見せに行ったり、みんなで食事をしたり、久しぶりに家族でゆったりと過ごした。
 
そして四日目。
夜九時の飛行機で都内に戻るその日、トーゴくんの家で昼間から行われた宴会に、わたしは母親とふたりで参加した。
 
うちの母親とトーゴくんのお母さんは高校時代、部活の先輩後輩だったらしく、家もとなりに建ててしまうくらい大の仲良しだ。

そのせいもあり、わが家は昔からお隣りさんと家族ぐるみの付き合いをしていて、トーゴくんの家で集まりがあると、なぜかうちの家族が紛れている、ということがよくあった。
 
もっとも、トーゴくん自身は上京して以来、冠婚葬祭以外の集まりにはほぼ参加していなかったから、わたしの家族と会うのは久しぶりのはずだ。そういうわけで、母は今朝からやたらと興奮している。

「トーゴくん素敵ねぇ。後光がさしてるわぁ」
 
台所で料理を盛りつけながら、お母さんはチラチラと王子様を覗き見てはため息をついている。
 
わたしは台所仕事を手伝いながら、リビングに視線を走らせた。
続き間になっている座敷を開け放し、ローテーブルをふたつくっつけて大勢が一度に食卓を囲めるようにセッティングされている。
 
テーブル上には出前のお寿司と茹でた毛ガニ、おばさんが作った煮物、ポテトサラダ、それから子どもたちの大好物であるカラ揚げなど、様々な料理が並んでいる。

食卓の隅で赤く彩りを添えるのは、わが家の親戚の家の畑で採れたトマトだ。形はよくないけれど、甘味が強くて美味しい。

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