裏腹王子は目覚めのキスを
すぐ近くにそんな男の人がいたせいで、容姿が優れた男性を見るとつい『この人はきっと遊んでる』と思うようになってしまったわたしの歴代彼氏は、三人とも味のある顔をしている。
目だったり、鼻だったり、顔全体だったりが、トーゴくんのそれとは対極の形をしている人を、わたしは無意識のうちに選んだのだ。
最後に付き合った彼氏は周囲からボクサーと呼ばれていた。
色白で緩んだ身体つきの彼にボクシングの経験はなかったけれど、ぺちゃんこな鼻で、その真ん中がまるで誰かに殴られたようにへこんでいたから、周りが勝手につけたあだ名だった。
一年前に別れたその人のことを考えているうちにまぶたが重くなり、いつしか深い眠りの底に落ちていたわたしは、ケータイのアラーム音で目を覚ました。
枕元に手を伸ばして鳴り続ける電子音を止めると、朝の七時になっている。
ゆっくりと身体を起こしてあたりを見回し、馴染みのない白黒の部屋にしばらく思考が停止した。ぼんやり考えているうちに、おぼろげな記憶が輪郭を取り戻していく。
ああ、そうだ。トーゴくんの家に泊まったんだっけ。
そう思って視線を下げた瞬間、目に入ったものに呼吸が止まった。
わたしの横、セミダブルのベッドにふたつ並んでいた枕のひとつを抱くようにして、男の人がうつ伏せに寝ている。
ほどよく締まった背中の筋肉ときれいに浮き出た肩甲骨が目に焼きついて、喉が痙攣した。