裏腹王子は目覚めのキスを
 
豪勢な食卓を囲むのは、トーゴくんのお父さんとトーゴくん、それから彼の十歳年上のお兄さんである圭吾くん、その子どもたちの合計六人だ。

圭吾くんのお嫁さんは、友達と遠くのプールに遊びに行ったという長女のユイカちゃんを迎えに行っていて、わたしと母とおばさんの女三人で食事の支度やテーブルの準備をしていた。
 
用意が整うとアルコールの栓が抜かれ、お盆最後の宴会が始まる。

「羽華ちゃんありがとう、もう座ってていいわよ。栄(さかえ)ちゃんも」
 
トーゴくんのお母さんは58歳だけれど、その年代の人からするとすらりと背が高く目鼻立ちもくっきりしていて、さすが王子様のお母さんといった感じの美人だ。

どちらかというと天然なうちの母――宮野栄――とは正反対で、はきはきと明るく気風がいい。

「羽華お姉ちゃん、それ食べたい」
 
呼ばれて顔を上げると、トーゴくんの甥っ子で10歳の長男ハルトくんがわたしのほうを指差している。

「え? あ、卵焼き? 待って、今取ってあげるね。ケントくんとサヤカちゃんも食べるかな?」
 
元気に返事をする4人姉弟の子どもたちは、この場にいない長女のユイカちゃんを筆頭に13歳からきれいに3つずつ年が離れている。
みんなお父さんの圭吾くんに顔立ちがよく似ていて、喧嘩もしょっちゅうだけどとても仲がいい。
 
トーゴくんが上京したあと、おばさんをしんみりさせる暇も与えず、子どもたちは桐谷家を明るく盛り上げている。

「悪いね、羽華ちゃん」
 
テーブルの端に座る圭吾くんに笑いかけられて、「いえいえ」と首を振った。

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