裏腹王子は目覚めのキスを
30歳のトーゴくんが甘いマスクの王子様なら、40歳の圭吾くんはスポーツマンタイプのさわやかな美形騎士といった感じだ。
身長は180センチ近くありそうで、がっしりとした健康的な体つきをしている。
「ケント、ほら、欲張ってそんなに取るんじゃない。ひとつ食べ終わってからだろ」
次男を注意をする圭吾くんの正面にはトーゴくんが座り、ふたりに挟まれるように奥のお誕生日席に白髪の男性があぐらをかいている。トーゴくんと圭吾くんふたりの父親だ。
「おじさん、目の具合はどうですか?」
かたわらに膝をついて空のグラスにお酌をしながら尋ねると、おじさんは気弱そうに笑った。
「いやー、どうにも不便だね」
かけているメガネに手をかけ、ずれを直すように動かす。
「まだ二重に見えるんですか?」
「ああ。このメガネをかけてればちゃんと見えるんだけどね。片方だけプリズムレンズ入れて、見え方を矯正してるから」
おじさんは春先に目が二重に見えるようになったけれど、病院で検査をした結果、老化で目の筋肉が衰えているせいで片方の目が正常に見えなくなっているということが分かっている。
「あんまり外に出てないんだって?」
傍らで毛ガニを器用に剥いていたトーゴくんがおじさんを横目で見る。
彼の言葉を肯定したのは、もう片方のお誕生日席に座したおばさんだった。
広いリビングに通る声ではきはきと言う。
「そうなのよ! もうお父さんたら仕事辞めてから部屋にこもりっきりで! 身体によくないわよねぇ」