裏腹王子は目覚めのキスを
トーゴくん……結婚する気になったの?
どくんと、心臓が鳴る。
誰か……結婚してもいいって思える相手が、見つかったってこと……?
胸が焼け焦げる気配に、わたしは慌てて手元に意識を戻した。
洗ったお皿を一枚ずつ丁寧に拭いて、食器棚にしまっていく。
「まったく、悠長なんだから、統吾は」
ぷりぷりと怒っているおばさんをこっそり見やる。
とぼけた性格のうちの母親と違ってしっかり者のおばさんは、怒ると相手が心を入れ替える素振りを見せるまでとことん叱る傾向にある。
トーゴくんもおばさんに似て頑固だから、ふたりがまともに意見を交わしても決着がつかないのは火を見るよりも明らかだ。
だから、おばさんの話を打ち切るために、トーゴくんは結婚というキーワードを使って適当に話を合わせただけかもしれない。
どこかすがるような気持ちでそう考え、わたしは王子様を間近に見てうっとりしている母親と手分けをして、人数分のババロアとお茶をテーブルまで運んだ。
「やっぱり、統吾なんかに羽華ちゃんはもったいないわ」
テーブルに座りながら、おばさんは離れた場所の次男坊を睨みつける。
「羽華ちゃん美人だし、引く手あまたなのに、わざわざうちの次男を押し付けるなんてとんでもない話よね」