裏腹王子は目覚めのキスを
 
背中まであるダークブラウンの髪をひとつにまとめ、カーディガンの袖をまくりあげた格好は飾り気がなく、自宅にいるときとまったく変わらない。

化粧も普段から控え目だし、昔と大きく変わったところといえば、中学生まではショートカットだった髪がロングになっていることくらいだ。
 
活発な女子が集まるバスケ部に所属していたくせに内向的だった性格は今も変わっていないし、髪が伸びたくらいでそんなにイメージが変わるものだろうか。

「付き合った人はいるけど、男の人の裸なんて……見慣れてないよ」
 
洗い物を再開しながら口をすぼめると、トーゴくんは「ふうん」とつぶやいて思い出したように振り返った。

「つか、弟いたよな、確か」

「桜太(おうた)は裸族じゃないし」
 
五歳年下の弟――宮野桜太――は実家暮らしで地元の大学に通っている大学生だ。

わたしと違って社交的で世渡り上手な桜太は、教授のコネで地元企業への就職が決まっている。そんな弟も、トーゴくんが上京したときはまだ若干十歳だった。
 
改めて過ぎ去った年月の大きさを感じていると、幼なじみの彼は「そりゃすいませんねえ」とちっとも悪く思っていなさそうな口調で弁解した。

「真っ裸で寝たほうが身体にいいんだよ。服着て寝るより疲れが取れるし。お前もやれば?」


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