裏腹王子は目覚めのキスを
「母親に言われたんだろうけど、別にこの部屋片づけなくていいからな」
「えっ」
「明日には帰るんだろ? 今日は都内観光にでも連れてってやるから」
さくさくと話を進めようとする彼にわたしは慌てた。
「なに言ってるの、片付けるよ」
「いや、これ一日で終わらせるとか、無理だろ……」
ごちゃごちゃと物があふれたリビングを見渡して、トーゴくんはあきれ顔をする。散らかしているのは自分のくせに、まるで他人事のように汚れた部屋を見てる。
苦笑してしまった。
どうやら彼は、わたしが土日を利用してここを訪ねに来ているだけだと思っているらしい。
「ちゃんときれいにするまで、こっちに滞在するつもりだし」
「は? だってどんだけかかるかわかんねぇだろ。下手したら一週間以上かかるぞこれ」
驚いた様子の彼に、わたしはうなずいた。
「うん、だから片付くまで」
「……だってお前、仕事は?」
曖昧に笑ってみせてからゆっくり紅茶を淹れ、わたしはトーゴくんの正面の椅子に腰かけた。
「わたし今、休職中だから……」
「休職? なんで? つか、お前何の仕事してんの? 勤め先は地元だろ?」
思い出したようにテーブルに身を乗り出して矢継ぎ早に質問する彼に、マグカップを持つ手が震えだした。