裏腹王子は目覚めのキスを
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チャンギ空港に到着すると、わたしは健太郎くんに連れられるままイミグレーションを抜けた。
預けた荷物を引き取るバゲージクレームはやたらと広く、十基以上のターンテーブルが奥までずらりと並んでいて、自分たちが乗っていた便の荷物がどこから出てくるのかわからない。
少し迷ってから無事に搭乗した便名を見つけ、荷物が流れてくるのを待った。
そのあいだにわたしは、心配してくれている弟に【チャンギ空港に着いたよ】と簡単なメッセージを送った。
日本から出て初めて踏んだ異国の地には、当たり前だけどいろんな国の人間がいる。
欧米人の姿もあるけれど、やっぱり目を引くのはアジア人の姿だ。
日本人だってアジア人には違いないのに、そこにいる人たちは、肌の色や顔の造作がわたしたちとは微妙に異なっている。
もちろん、話す言葉も。
天井が高く開放感のある広い空港と、行き交う様々な国の人々。
漂うのは、日本では感じられない、ゆったりとした時間の流れとリズム。
見慣れない景色をぼうっと眺めていたら、健太郎くんが振り返った。
「荷物、流れてきたよ」
「あ、うん」