裏腹王子は目覚めのキスを
言葉を失っているわたしをよそに「つか今朝も一緒に寝てたようなもんか」なんて涼しい顔をしている。
「やっ、わ、わたし、ビジネスホテルに……」
「ここらへんのホテルは安くても一泊四千円だぞ。一週間で二万八千円。そんなん払うのバカらしいだろうが」
「じ、じゃあ、ネットカフェとか、適当に……」
「あのなー、そんなとこに泊まるくらいならうちの簡易ベッドのほうがよっぽど安全だし身体も休まるだろ」
「で、でも」
「心配しなくたって、お前のベッドにもぐりこんだりしねえよ」
「今朝もぐりこんでたじゃない……」
「あれは俺のベッドだ」
強く言い放ち、悪戯っぽい顔でわたしを見下ろす。
「まあでも、お前がどうしてもって言うんなら、一緒に寝てやらないこともないけど?」
「……それはないです」
静かに否定すると、トーゴくんは心底おかしそうに笑い出した。
「わかってるって! 俺もお前に手え出すほど飢えてねえから、安心しろ」