裏腹王子は目覚めのキスを
わたしの思考は麻痺したままだ。
鏡を見ても、ウェディングドレスをまとっている女性が自分だとは、とても思えなかった。
まるで鋼鉄でできたドレスを着せられているみたいに、身体が重い。
これから結婚式だなんて、わたしとは無関係の、どこか遠い国で起きてる出来事みたいだ。
ドアの外に出ると、銀色のタキシードを着た健太郎くんが待っていた。
レンタルの衣装はちょうどいいサイズがなかったのか、小柄な健太郎くんはタキシードのほうに着られているといった感じで、幼稚園のお遊戯会みたいだ。
婚約者と式場の下見に行って、ウェディングドレスを何着も試着して、あれやこれやとケンカをしながらも準備を進めて、当日は友達や家族に囲まれ、永遠を誓う瞬間を見守ってもらう。
わたしが思い描いていた結婚式の形とは、すべてにおいて違っている。
それでも、わたしのためにしてくれたことなら、すべて黙って受け入れるべきなの?
頭がうまく働かない。
「行こう、羽華子」
手を差し伸べられ、わたしはほとんど無意識に、健太郎くんの手のひらに自らの手を重ねた。