裏腹王子は目覚めのキスを


「子ども四人てすげえな……わが兄ながら」
 
改めて気づいたような言い方をすると、わずかに眉間を狭める。

「家の中は荒れ放題に違いねえな」
 
しみじみと口にしてから、はたと言葉を切った。

「ま、俺に言われたかないだろうけど」
 
わたしはトーゴくんの正面に座りながら、ぐるりとあたりを見回した。

「ほんと、すごい状態だね……」
 
わたしの視線を追って、彼はなんでもないように言う。

「はは、散らかってんだろ。最近引っ越したばっかでさ。同じマンション内だけど、上の階のほうが広いから」
 
以前はこのマンションの七階で1LDKに住んでいたらしいけれど、物が増えて収納が足りないからと、ここ、十四階の2LDKに越したのだという。

「といっても結局収納は少ないから、増えた分の部屋が丸ごと物置部屋っていうか」

「いつ……引越したの?」
 
リビングの隅に堆く積まれた段ボール箱を眺めながら問うと、トーゴくんは微かに頬を引きつらせた。全身余すところなく張り巡らせた“余裕たっぷりの王子様”の像がわずかにほつれる。

「確か……一年前?」
 
思わず肩が落ちた。


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