裏腹王子は目覚めのキスを

「も、もう、露出狂! 早く服着てよ」  

「やだ。あついし」
 
冷蔵庫から缶ビールを取り出すその肩は、まだ小刻みに揺れている。

「わ……笑いすぎ」

「いや、だってさ……お前も飲む?」
 
眉を下げて笑いながら、トーゴくんは二本目の缶ビールをわたしに差し出した。

「でも、わたしはもう飲んじゃダメって言ってたじゃない」

「ああ、まあ、外ではな。お前、飲み過ぎると色気振りまいてあぶねーから」

「え……?」

「ま、明日出かけるし、今日はやめとくか」
 
一本を冷蔵庫に戻し、「早く寝ないと肌が荒れるぞー」とキッチンを出て行く。

せっけんの香りが遠ざかり、細い背中に浮き出た肩甲骨がやけに目に焼き付いた。
 
色気を振りまいてるのはどっちよ。

「おやすみなさい。トーゴくんも裸でいすぎて風邪ひかないようにね」
 
ソファに沈む彼に精一杯の皮肉を言って、わたしはリビングをあとにした。
 

胸の鼓動はまだ鳴り止まない。
 
とんでもないものを見てしまった気がした。
水も滴る裸の王子様なんて、目の保養を通り越して劇物以外のなにものでもない。
 

布団にもぐりこんでも、目はさっきよりも一層冴えてしまって、しばらく眠れそうになかった。


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