裏腹王子は目覚めのキスを
頭にぐちゃぐちゃに詰め込まれていた、悩みや心配や考え事が溶けだしていって、頭の中がからっぽになる。
となりから規則的な息遣いが聞こえて目を向けた。
わたしと同じように仰向けに寝転がった王子様は、初体験の岩盤浴であっというまに眠りに落ちてしまったらしい。わずかに口を開いて、静かに胸を上下させている。
相当疲れてるんだな……。
整った横顔を惜しげもなく披露する彼を、じっと観察する。
大人になったトーゴくんの寝顔は、見慣れていない。
小学生の頃はとなりに寝てても寝顔を観察することなんてなかったし、トーゴくんが中学生になると一緒に寝る機会もなくなった。
まつ毛、長いなぁ。
こんな機会もないと思い、しげしげとその顔を見る。
すっと伸びた鼻の角度と、凛々しく生え揃った眉。栄養が偏っていそうなのに、肌はそんなに荒れてない。
唇はふっくらとしていて、デッサンのお手本のように形がきれいだ。
眠れる美麗の王子様。
この唇に触れた女の人たちは、どんなことを感じて、どんなふうに色づいていったのだろう。
トーゴくんのことを本気で好きだった女の人は、この唇に喜びを感じて、でもやがてくる別れを意識したのだろうか。
自分が本気になった女の子は自ら別の男性へと放り出し、自分に本気になった子は容赦なく捨て去る。
トーゴくんとのキスは、別れの口づけだ。
なんてひどい男。
そう思うのに、胸が痛んだ。
トーゴくんの幸せって、何なんだろう。