裏腹王子は目覚めのキスを
わたしの視線を追って背後を振り返ると、トーゴくんはもう一度王子様の微笑を浮かべてから向き直った。
「トーゴくんと並ぶと、わたしまでじろじろ見られるなぁ……」
分かっていたことだけれど。
王子様が連れている女がどの程度なのか。同性を見る目が厳しい女子たちに、女としての外見レベルを勝手に査定されてしまう。
そんな視線を向けられて、居心地がいいはずはない。
「いや、羽華。お前……」
彼女たちのほうをチラチラと気にしながら何かを言いかけた彼から、わたしは目を逸らす。
「話さなくていいなら岩盤浴行こう。時間遅くなると混んじゃうから」
バスタオルとペットボトルのお水を持って足を踏み入れたそこは、間接照明が優しく照らすだけの洞窟のような空間だった。
むっとする空気の中、先客たちはウェアを着たままそれぞれ寝そべっている。仕切りがないから、仰向けやうつ伏せで横になる人たちの姿がよく見えた。
同じ館内着を着て行儀よく並ぶ姿は、なんとなく魚市場のマグロを思い出させて、ちょっと面白い。
奥にふたり分のスペースを見つけて、わたしは石床にバスタオルを敷いた。トーゴくんは物珍しそうに辺りをうかがいながらバスタオルの上にあぐらをかく。
室内は静かだった。BGMも流れておらず、石とオレンジの照明の温かさにほっと気持ちが緩んでいく。
眠っている人の寝息が聞こえてくるくらい、室内には音がない。
トーゴくんに目配せをして、わたしは仰向けに寝そべった。背中から心地よい熱が伝わってきて、目を閉じると張り詰めていた筋肉がほどけていくのがわかる。