裏腹王子は目覚めのキスを

「うわ、すいません」
 
あわててわたしからカードを受け取ると、顔を真っ赤に染めた。

「なんでポケットから落ちたんだろ……」
 
困惑気味につぶやく彼に、なんとなく言ってみる。

「もしかして……ポケットに穴、空いてません?」

「え!?」
 
はっとしたように右手をポケットに突っ込むと、男の子は絶望したような顔をした。

「空いてる……」

「フロントで変えてもらったほうがいいですよ」 

呆然としている彼がちょっと可愛くて少し笑いながら言うと、大学生は恥ずかしそうに頭を下げた。

「すみません、そうします」
 

小走りで立ち去っていった彼は、数分もしないうちに戻ってきた。
新しいハーフパンツに履き替えてきたのか、さっぱりした顔で走ってくる。
 
何気なくそれを見てると、彼は思いがけずわたしの正面で立ち止まった。

「あの、さっきありがとうございました。助かりました」

「え、いえいえ」
 
わざわざお礼を言いにくるなんて。
いまどき珍しいくらい律儀な子だな、と感心していると、彼は背後のカフェを一瞥して言いにくそうに口ごもる。

「あの、もしよければ、お礼になにか飲み物でも――」
 
そのときだ。


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