裏腹王子は目覚めのキスを

「羽華」
 
煙草の匂いが鼻をつく。
 
足音もなく現れたトーゴくんが、わたしの肩を掴んで自分のほうへと引き寄せる。

「俺の連れに何か?」
 
突然現れた大人の男に、大学生はひどく驚いたように目を見開いた。
わたしもあっけにとられたまま動けない。

「あ、いえ……すいません」
 
大学生らしき彼はあわてて目を伏せ、猛獣を前にした草食動物のように身体を縮めながら去っていった。
そんな彼を見送ってトーゴくんは息をつく。


「どうしたの……? そんな血相変えて」
 
わたしの肩から手を外し、王子様は不機嫌そうに睨んでくる。

「……お前さ、ひとりでここ来てたって言ってたけど、今みたいによくナンパされてたんじゃねえの?」

「え、ないよ。いつもレディースラウンジ使ってたし。ていうか、今のは別にナンパじゃ」

「わかってねえなお前は」

「え、何が?」
 
険しい顔をする彼を、わたしは困惑しながら見上げる。

「自覚がなさすぎる」


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