裏腹王子は目覚めのキスを


任されたからには、わたしもトーゴくんがまっとうな生活を送れるように全力を尽くさなければならない。

外見ばかり美しい王子様の実際の生活空間を目の当たりにして、改めて気持ちを入れ直していると、彼は思い出したようにわたしを見た。

「そういやお前、今日、どこ泊まんの?」 

「え? ああ、この近くのビジネスホテルにでも行こうかと」
 
近所の宿泊施設を検索したケータイ画面を見せると、トーゴくんはあっけらかんとした口調で言い放った。

「ここに泊まればいいじゃん」

「えっ」

「わざわざホテル使うなんて時間と金がもったいねえし。確か、折り畳み式の簡易ベッドがあっちの部屋に……」

「で、でも、そんないきなり、悪いよ」
 
リビングを出ていく広い背中を慌てて追う。

トーゴくんは短い廊下に出ると、すぐとなりの部屋のドアを開けて電気をつけた。浮かび上がった六畳ほどの空間はリビングほどではないにしろ、雑然としている。
 

フローリングの三分の一は積み重なった段ボール箱が占めているし、空いているスペースには埃をかぶった掃除機や空気清浄機が放置されている。

ドアの脇には何故か未開封の洋服屋の紙袋がいくつも置かれていて、隙間から透明な包装袋に入ったカッターシャツが覗いていた。

「こん中だったかな」
 

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