絶対零度の鍵
「…じゃ、いこっか」


突然、右京はにこりと微笑んで、立ち上がった。



「―は?」



僕の頭は一瞬真っ白になった。


どう見たって怒り心頭の僕を前に、この女、一体何を言い出すんだろう。

しかもさっきから僕の質問をことごとく無視してやがる。


呆然とする僕の前をスタスタと通り過ぎて、右京は玄関へと向かう。


「ちょ、ちょっと待てって」


その背中を追いかけて、咄嗟に肩を掴んだ。


「?何?」


首だけ振り返ると、右京は不思議そうな顔をして僕を見た。


「何って…どこに行くんだよ」


そんな僕の質問に益々不思議そうな顔をすると、右京はふと思い当たるように、あぁ、と呟いた。


「地球滅亡を阻止しに」


さらりと言い放ち、石と化した僕を置いて、彼女は歩を進める。


僕、もう、勝てそうに無いです。


家の中なのに、初秋のような風を感じつつ、僕は心の中で敗北を宣言した。
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