絶対零度の鍵
「ねぇ、クミ。最初あたしを見つけた所に連れて行ってくれない?」


玄関を出たところで、ドアを開けたまま右京は言った。


肩を落としながら、彼女の後ろで屈んで靴を履いている僕は、


「…仰せのままに」


すっかり脱力して答える。


よくわかんないけど、もうどうだっていい。


いや、ほんとに、だってこの子、つい数時間前まで瀕死だったんだぜ?確か。

なのに僕より元気ってどうよ。

そこからしてもう意味不明じゃん。


そんな風に考えていると、上からクスリと笑い声が聞こえた。


怪訝な顔を上げると、右京はこっちを見て楽しそうに笑っている。


うん。かわいい。


…そうじゃなくって。


はぁ、と溜め息を吐いて俯くと、僕はのろのろ靴紐を結んだ。
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