絶対零度の鍵
「…じゃ、やっぱり馬鹿なんだ」


馬鹿はあんたの方だろう。

カチンときた僕は、右京を睨みつけるが、彼女の視線はどこか宙を漂っていて、がっかりしているように見える。


勝ち気な雰囲気だった右京が、ここまで意気消沈しているのは出逢ってからというもの初めてだったので(まだ24時間も一緒に居ないんだけど)、僕もなんだか拍子抜けして、というより若干心配になって、寄せた眉を戻した。


「…どういう意味だよ」


そう訊ねると、右京は寂しそうに小山から見える風景の方へ顔を向けた。


「人間てさ。自分たちの住んでいる星について、なんとも思わないの?」


右京の言葉に、僕は吹っ飛ばされた時の情景が思い浮かんで、身体の痛みを再確認する。


右京は僕の言った言葉に対して言っているのだろうか。


僕にとって、明日が来るか来ないかは大して問題じゃないってことを。


「…それは僕がそう思っているだけで、他の人もそうとは限らないと思うけど」


彼女の気落ちしている理由はよくわからないけど、とりあえずそう答えた。
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