それは…好きだから。(樹生side)
「今日はうちごはんにしよう。久しぶりに彩佳の手料理が食べたい」

 しばらくバタバタしていたせいか、外より家でゆっくり寛ぎたかった。

 うちごはんの時はいつも彩佳の部屋に行く。

「うん。リクエストはある?」

「そうだな。すぐには思いつかないから考えとく」

「じゃあ、帰りにスーパーに寄っていい?」

 これもいつもの恒例。
 彩佳のマンションの近くの大型スーパーで買い物をして、俺が荷物持ち。
 新婚みたいでそれも楽しい。

「OK。いいよ。それと今夜は泊っていくから」

「あの……今日は、平日だけど……?」

 知っている。火曜日で週が始まったばかり。
 いつもなら週末にしか泊まらない。けど、今日は特別。


 忙しい仕事の合間に何度もメールをしたけれど、
 返ってくる返事はデス、マス調の素っ気ないものばかり。
 まるで業務連絡のような味気なさ。色気のなさ。

 寝る間もないほど忙しい……
 メールでちょっと大袈裟にぼやいてしまったから、
 彼女なりに気を使ったんだろう。遠慮がちな所は彩佳らしかったけど。

 仕事も一段落したし、寂しい想いをさせた分、
 今日は思いっ切り甘えさせてあげたい……



 俺は彩佳の顎に手をかけて上向かせた。

 ちょっと戸惑っている彼女の唇にキスを落とす。
 触れ合うだけの軽い口づけ。


「この続き、今夜しよう」


 耳元で囁くと彩佳の顔が、瞬く間に朱に染まった。



 そんな彼女に破顔して、俺は壁の拘束を解いた。
  
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