ソフレ
「幸花ぁ、今のウチの田中だろ?
アイツ、筋金入りの不良だし。また暴力行為で、ガラスを割ったんだろ?」
そんな言い方に。
自分の生徒ぐらい信用してよ! と怒鳴りたいのをこらえて、わたしは冷ややかに声を出した。
「職場ではわたしのコトは『西尾』とちゃんと、名字で呼んでください。
それに田中君は、暴力行為でガラスを割ったんじゃありません。
部活動が終わった後、一人でサッカーのシュート練習をしてて割ったんです」
「ふーん、ずいぶんあの生徒を庇うじゃないか」
「……!」
西尾先生は、わたしの話なんて一切聞かず。欲望にまみれた男の顔して近づいて来た。
……マズイ!
手に持っている掃除用具で応戦すればいいのに、考えられず。
全部を放り出して逃げ出そうとする寸前。保健室の扉のすぐわきの壁に、追い詰められる。
「職場では名字で呼べって?
もちろん、誰かがいる時は、他人ごっこしてやるよ。
けれども、他に誰もいないときぐらい、名前を呼んでも良いとは思わねぇ?
さ~ち~か」
出口まで、あと少しだ。
じりじりと、横にずれて行こうとするわたしの真横の壁に、西尾先生はすかさず、威嚇するようにドン、と手をついた。
その乱暴な音に驚いて、びくっと怯えるわたしを無視して、彼はぐっと自分の身体を寄せて来る。
近い! 怖い! イヤだ!
アイツ、筋金入りの不良だし。また暴力行為で、ガラスを割ったんだろ?」
そんな言い方に。
自分の生徒ぐらい信用してよ! と怒鳴りたいのをこらえて、わたしは冷ややかに声を出した。
「職場ではわたしのコトは『西尾』とちゃんと、名字で呼んでください。
それに田中君は、暴力行為でガラスを割ったんじゃありません。
部活動が終わった後、一人でサッカーのシュート練習をしてて割ったんです」
「ふーん、ずいぶんあの生徒を庇うじゃないか」
「……!」
西尾先生は、わたしの話なんて一切聞かず。欲望にまみれた男の顔して近づいて来た。
……マズイ!
手に持っている掃除用具で応戦すればいいのに、考えられず。
全部を放り出して逃げ出そうとする寸前。保健室の扉のすぐわきの壁に、追い詰められる。
「職場では名字で呼べって?
もちろん、誰かがいる時は、他人ごっこしてやるよ。
けれども、他に誰もいないときぐらい、名前を呼んでも良いとは思わねぇ?
さ~ち~か」
出口まで、あと少しだ。
じりじりと、横にずれて行こうとするわたしの真横の壁に、西尾先生はすかさず、威嚇するようにドン、と手をついた。
その乱暴な音に驚いて、びくっと怯えるわたしを無視して、彼はぐっと自分の身体を寄せて来る。
近い! 怖い! イヤだ!