恋するドライブ
「というわけで、交代」
「え?」
「運転。来た道を戻ります」

 江端は助手席のドアを開け、車の前を通って運転席側に立った。

「ちょっと、雨……! 濡れちゃうじゃない」

 あわてて菜々美はシートベルトを外し、車を降りる。対向車が来てもすれ違えないほどの細い道で、靴底が滑る。
 雨に打たれながら、儀式めいたハイタッチをした。

「菜々美さんはスマホいじっててもいいですよ」

 江端はギアを替えると、左手を助手席のシートに乗せ、上半身を後ろにねじった。
 その姿は腹が立つくらい決まっていて、ああ、また好きになってしまう、と菜々美は思う。
 それでもいいやと心に許せば、うっとり眺めるだけだ。ここは誰にも邪魔されない、ふたりだけの空間なのだし。
 車が後退を始める。
 相手のいろんな部分を知りたいと願う反面、自分に関しては悪い面を見せたくないなんて、傲慢な考えだったかもしれない。
 迷ったり、立ち止まったりした上で、正しい道を見つけられたなら、全部必要な回り道だったといつか振り返れる。
 ものごとがうまくいくときも、うまくいかないときも。そう、まるで、結婚式の有名な誓いの言葉のように、ふたりでいられれば。
 未来を夢見る気持ちは、雨上がりに虹を見つけた心地に似て、菜々美の目には輝く王子様が映っている。
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