【短編】5℃。
「だって、今夜、あの子と」
「お前、ホントに鈍いな。鈍いから壁ドンされんだよ」
「何が」
「お前、俺のこと好きだろ」


突然そんなことを言われて私は慌てた。


「はああ? な、なに寝ぼけてんの、吉田」
「好きじゃないわけ?」
「……」
「ンじゃ、あの子と飯行っちまうぞ」
「……」
「飯行ってチューしてピーするぞ?? いいのか??」


同期と吉田がイチャつくシーンが目に浮かんだ。同期が背伸びをして吉田が同期の顎を摘まんで近付けるというリアルな構図。


「や……」


吉田は突いていた手の肘を折ったのか、吉田の顔が更に近付いた。


「ン??」
「……やだ。行っちゃ、やだ」
「そ」
「私、吉田が好き。だから、行かないで」
「ヨシ」
「ヨシ……?」


私は吉田の顔を見つめた。


「付き合うか、俺と」
「何言ってるの、あの子が」
「お前、ホントにホントに鈍いわ。あれは演技」
「演技??」
「俺が頼んだの。そうでもしないと気付かないだろ理香は自分の気持ちに……」


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